株式会社 中田農園
2019/12/25 掲載
株式会社 中田農園
地域:坂東市
支援内容:法人化(2018年10月設立)
主品目:米・そば・麦
経営面積:約120ha
独自農法で多収量・高品質な作物を生産
2003年に45歳で脱サラし、家業を継いだ中田伸一さん。当時は10haの田畑で米、麦、大豆を生産するも、経費を差し引くと手元に残るのは雀の涙程。スタートの数年は元職場でアルバイトをしながら、兼業を余儀なくされました。転機が訪れたのは2006年に施行された国の品目横断的経営安定対策。同政策のモデル事業に参加し、地域の方々から土地を譲り受け、次第に耕作面積を拡大していきました。そして坂東市や常総市内の水田55ha、畑65haを耕作する市内でも指折りの農家となり、米、そば、麦を生産しています。
中田さんが追求するのは、ワインのように風土の持つ力を最大限に引き出した独自の「テロワール農法」です。水田には境町の養鶏場の鶏糞を3年以上熟成・分解した自家製堆肥を使用し、区画ごとに毎年詳細なデータを蓄積。栽培から精米まで自社一貫管理することで、毎年平均85以上の食味値をキープしています。また、「平成25年度全国そば優良生産表彰」で農林水産大臣賞を受賞したそばは、開花期に根元から倒伏するのを放置する「ウナギ登り栽培」によって、耕作面積に対する収量は全国平均の倍近くを実現。石臼挽きの自家製粉まで一貫管理し、老舗・大手製粉会社などに卸すなど、多収量で高品質な作物を生産し続けています。
専門家の支援でスマートな法人化を実現
独自の農法を追求しながら、確かな技術と実績を積み上げた中田さん。2017年頃から農業改良普及センターに法人化を勧められました。長男・悠太さんが跡継ぎとして農場に携わり始めたことも後押しとなり、2018年6月から法人化に向けた支援を開始。その際、茨城県農業参入等支援センターの専門家の派遣制度を活用し、法人化に必要な経営理念の策定など、中小企業診断士や社会保険労務士といった専門家の支援を受け、3ヶ月後の2018年10月19日、中田農園として法人設立に至りました。
中田さんは「専門家と二人三脚で法人化を進められたのは安心感がありました。アドバイスを受けながら経営理念を作るうちに、今後やりたいことが明確になったのは大きなメリット。各種書類の作成等もアドバイスしていただけたので、法人化は思った以上に順調でしたね。経営基盤の安定化によって、長男に農園を引き継ぎやすくなりますし、日本人の就労者も雇いやすくなる。社会的信用が向上することで、自社のブランディングもより一層進められると期待しています」と振り返ります。
法人化で広がる新たなチャレンジ
法人設立後は、「中田農園 テロワール米」を商標登録。そば粉は「神田山そば粉」としてブランド化し、口コミやネット等での直販を開始しました。早速、大手飲食チェーン店や近隣のゴルフ場、観光スポット、富裕層向けの店舗から注文が増え始めています。
中田さんは「まだまだというのが正直な実感。農業はちょっとしたことで信用が崩れるので、真摯にやり続けようと思います」。悠太さんは「まずは法人化に伴い、人材を確保したいです。今後はICTを活用した省力・低コスト・高効率の農業を進め、またドローンを使った農薬散布や追肥にも挑戦してみたいですね。そして、お米マイスターや様々な検査資格を取得して、栽培から商品化まで全て自社で管理できるようにしていきたいと思っています」と新たなチャレンジへ意欲を示しています。現在も農業改良普及センター等から多くの指導を受け、改善を継続しながら、栽培技術の公開や普及、地域活性化にも協力。これからも法人の強みを活かし、競争力の強化や収益性の高い農業を実践していく方針です。