岩崎農園

岩崎農園
地域:茨城町
支援内容:法人化、労務管理
主品目:メロン、水稲ほか
経営面積:約11ha
顧客のニーズを捉えて様々な品目を栽培する岩崎農園
岩崎農園の代表である岩崎宏幸さんは茨城町にて様々な農作物の生産をおこなっており、経営面積は約11haに及びます。
主力商品であるメロンの中でも、特に優香メロンはここ数年でかなり知名度が向上し、徐々に規模を拡大していますが、それでも生産が追いつかないほど、人気を集めています。その他にも米やトウモロコシ、ネギなど生産する作物の種類はとても豊富で、敷地内の直売所で多くの商品を購入することができます。「直売での需要がどれだけあるかが、何をどれだけ作るかの指標になっていますね。もちろんリスク分散と年間を通して従業員を雇うためにも、常にほ場に作物があるように多品目栽培に取り組んでいます」と岩崎さんは話します。
人材確保・安定雇用につなげる経営の客観視
岩崎さんは就農する以前はモノ作りに興味があり建設業に従事していたそうです。27歳の時、農家である父から「新たに従業員を増員することを考えている」と聞き、それならば自分がやってみようと就農を決意しました。就農して数年が経った頃、当時は他の農家の方とあまり繋がりが無かったために、農業研修を希望する問合せを受けた際に周囲に相談ができず、対応に困ったそうです。この経験が、岩崎さんにとって大きなターニングポイントとなり、それ以降地域の集まりに積極的に参加するようになりました。また、平成27年に青年農業士に認定されたことを契機に、周辺市町村の同世代の農家と顔を合わせるようになり、お互いの経営について話す機会が増えたことで、自身の経営を客観視できるようになり、課題を一人で抱え込むことも無くなったとのことです。
今後、農園の将来を考えて規模の拡大を進めていくと岩崎さんだけでは農園業務のすべてに関わることが物理的に難しくなることが考えられ、業務を分散できるようにするために法人も含め、対応を考える必要がありました。しかし、法人化や雇用に関してあまり知識がなかったため、人材を確保し安定雇用に繋げていく方法について、専門家の話を聞きたかったそうです。そこで、普及センターの紹介で専門家派遣を申し込み、中小企業診断士と社会保険労務士のアドバイスを聞くことにしました。
中小企業診断士の派遣ではSWOT分析※に取り組んだことが勉強になったそうです。自分の経営について、現状の問題点は何か、強みと弱みは何か、どこにお金がかかっているかを考え、知ることができたそうです。必死に作業に追われているとお金の流れが見えなくなるので、客観視できる機会になったのが良かったとのことでした。
社会保険労務士の派遣では、雇用に際してどのような義務があるのか、その内容と必要金額について学びました。「売上げや経費などの金額を具体的に試算したため、より分かりやすく実感できました。ちょうど雇用を考えていたタイミングであったため、非常に役に立ちました」と話してくれました。
地域の将来を見据えた仲間づくりと新たな担い手の育成
専門家の派遣を受けて、「法人化に関しては何となくの知識しかなかったので、レクチャーを受けてひとつずつ取り組むべきものが見えてきました。懸念していた点が一つ解決したため、かなり前向きに話は進んでいます。ベースとなる知識の習得や取り組むべき課題の優先順位が分かったおかげで視野が広がり、見えていなかったものが見えるようになりました」と岩崎さんは語ります。
最近は岩崎さんからの提案で、普及センターが法人化を目指す農業者を集めた勉強会を行ったそうです。「お互いに専門家のレクチャーを受け基礎知識がついた状態で参加し、立場も近い方と具体的な話ができて非常によかったです。他の農家さんとの繋がりを機に新たな人材に出会えたり、情報を共有できたりしています。こうした仲間づくりも大切にしていきたいですね」と、専門家派遣をきっかけとして新たな出会いに繋がっているようです。
「ありがたいことに毎年収益はアップできているので、これを人材育成に還元できたらいいですね。今後は、部門ごとに責任者を決めるなどして、従業員一人ひとりが責任と目的意識をもって仕事に取り組み、収支を考えるようになることが必要だと思います。これができれば、従業員が独立を考えた時に農業技術だけでなく経営面でもノウハウを持った状態になれますからね。ここで働いている間に、いろいろなアイデアを試して、失敗を自分の経営で活かしてもらいたい。やがてその人たちが成長して独立し、地域の新たな担い手になれば、それがこの地域、ひいては茨城県の農業のためになると思っています」と、自身の農園の経営だけでなく、地域の将来も見据えた経営をしている岩崎さんはこれからも地域農業の牽引役として活躍してくれることが期待されます。
SWOT分析
「強み(Strength)」、「弱み(Weakness)」、「機会(Opportunity)」、「脅威(Threat)」の頭文字SWOTから名付けられた、事業分析のツールのことです。 内部環境(自社がもつ資産やブランド力、品質など)のプラス要因の「強み」とマイナス要因の「弱み」と、外部環境(自社を取り巻く、市場や競合、法律など)のプラス要因の「機会」とマイナス要因の「脅威」に分けて整理することで、自社の事業の状況を知ることができます。

代表の岩崎宏幸さん

人気商品のメロンなどを求めて
多くのファンが訪れる農園

同園を管理する岩崎家の方々(前列)と
現場を支える若手従業員の方々(後列)