茨城県農業参入等支援センター

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株式会社かけひFarm

株式会社かけひFarm

2021/1/27 掲載

株式会社かけひFarm

地域:坂東市
支援内容:法人化(2018年12月設立)
主品目:米・レタス
経営面積:約20ha

 

先祖代々からの米農家を継いだUターン組

茨城県南西部に位置する坂東市は、都心から50km圏内の好立地。首都圏の台所として昔からレタスやネギ等の露地野菜と稲作が盛んな地域です。その地で農業を営む株式会社かけひFarmの筧達男社長は、就農前はパティシエという異色の経歴を持つUターン組。先祖代々守ってきた水田を引き継ぎ、13haでコシヒカリやあきたこまち、そして6haで飼料用米を栽培。秋から冬場の農閑期には約40aの畑でレタスも手掛けています。こだわりは、市内の養鶏場から仕入れた鶏糞を活用した土作り。また、減農薬・減化学肥料にも一部取り組んでいます。肥沃な圃場が生み出す優れた風味かつ安心安全な農作物は、卸売会社やJAを通じて大勢の人々に届けられています。
現在は親戚を不定期に時給で雇う一人農業スタイルですが、Uターンしてから法人化するまでの十数年は、両親から農業のイロハを学び、経費等の金銭面は全て両親が管理。そんな筧社長が法人化を進める大きなきっかけとなったのが、国の政策です。
「規模を拡大し、大規模農業にシフトする農家に対する国の優遇策が多い。例えば、設備投資の費用を法人には5割も補助することがあり、今の内に手を挙げておかないと、今後は先細りになるのは目に見えていると感じました」と語ります。

経営者マインドの醸成と法人化への決意

農機具は年々大型化の一途を辿り、乾燥機や保管庫の整備等も必要不可欠な上に高額。しかも食の多様化によって米価は下がる一方で、「米農家は辞めるか、大規模化するしかない」と法人化への決意を固めていきました。
そして県主催の「法人化促進講座」では、法人と個人の経営を比較し、農業経営における金銭の流れや人材確保・雇用といった具体的な基礎知識などを学んだほか、民間で開催されている農家向けのセミナーも積極的に受講して、経営者としてのマインドを醸成しながら、法人化への準備を進めていきました。
法人化に向けては、茨城県農業参入等支援センターから3名の専門家が支援チーム員として派遣されました。今後の業績を伸ばすため事業方針の相談を中小企業診断士に、社会保険や労災等の相談を社会保険労務士に、農地に関連する事項を農地中間管理機構から説明を受けました。
「農業改良普及センターの方々の力もお借りして進めていったので、頭をひねったのは定款ぐらい。元々、税理士さんには書類や確定申告等はお願いしていたこともあり、法人化の手続き自体は、それ程難しくなかったですね」と円滑な法人化を実現しました。

法人化の過程で見える化した自身の農業経営

法人化した時点で両親から事業継承した筧社長。法人化をし、2年間の農業経営を通じて感じた最大のメリットは、自身の経営の全容が明確に見える化できたこと。「法人化に際し、財務諸表を作成したことで、家計と分離した経営を把握することが可能となった。さらに客観的な指標である数値に基づいて、課題の分析と対策ができるようになった」と言います。
「法人税などは元々致し方ないものですし、今の所、自分以外のスタッフは親戚一人なので、給与計算は簡単。デメリットを感じることは、ほとんどありません。一連のコストが分かって今後の方針が立てやすくなりましたし、法人化で農地を借りやすくなる等のメリットばかりです」
以前は規模を拡大し、スケールメリットで経費のコストダウンを図る算段でしたが、会社の体力を考慮し、稲作の休耕期にネギ栽培など、レタス以外の品目を増やす方向へシフトチェンジを模索するなど、早速、事業計画に反映。そして畑作業の拡大に伴う人材確保も視野に入れながら、収益アップに挑戦していく予定です。

株式会社かけひFarm・筧達男社長

株式会社かけひFarm・筧達男社長

米の農閑期にはレタスを栽培

米の農閑期にはレタスを栽培

収穫した米の乾燥機も備える

収穫した米の乾燥機も備える

坂東地域農業改良普及センター佐々木専門員がサポート

坂東地域農業改良普及センター佐々木専門員がサポート