大場いちご園

2024/8/31 掲載
大場いちご園
地域:水戸市
支援内容:法人化、マーケティング
主品目:イチゴ、コマツナ
経営面積:約2.2ha
多くのファンを持ついちご園
水戸市鯉淵町にある「大場いちご園」。こちらを営むのは大場裕介さん、拓哉さん兄弟と父の政義さんで、イチゴとコマツナの栽培に取り組んでいます。同園のイチゴは茨城県いちご経営研究会が開催する「茨城いちごグランプリ いばらキッスの部」において2度の大賞に輝いています。また、希少な白イチゴ「淡雪」の生産にも取り組んでおり、「いばらキッス」と併せた紅白のセットが人気を博しています。
長男の裕介さんは、実家を離れて進学し、就職活動の時期になって、改めて外から農業を見たときに魅力を感じ、大学卒業後、2006年に父のもとで農業に従事し始めました。就農してすぐに、価格の安定性を考慮して主品目をそれまで栽培していたメロンからイチゴへと切り替え、これまで規模の変化はありながらもイチゴは裕介さんが中心となって作り続けています。
還元型太陽熱土壌消毒※や潅水する水の工夫など、「イチゴ栽培にとって良いと思ったことは全部やりたいと考えています」とこだわりを持って作られたイチゴは、その品質が高く評価され、県内の高級レストランや都内の有名ホテルでの取扱いのほか、令和6年の春には都内の高級果実専門店でも販売されました。また、2020年には自宅敷地内に直売所をオープンし、冬〜春のイチゴのシーズンには多くの人々が「大場いちご園」のイチゴを求めて訪れています。「直売所を開いてからは、お客さんの声がよりダイレクトに届くようになったので、今まで以上にイチゴの味や品質に敏感になったと思います」と、経営の拡大が更なる栽培へのこだわりに繋がっているようです。
将来を見据え専門家派遣事業を活用へ
これまで数々の実績があり、着実な経営を続けてきた「大場いちご園」ですが、そんな中で裕介さんは「両親の年齢をふまえても、経営継承や法人化をいずれ考える必要があると感じていました」とのこと。ご自身でも情報収集はされていたそうですが、以前から付き合いのあった農業改良普及センターの紹介もあって、経営診断による経営内容の総点検と、専門家によるアドバイスを聞くために茨城県農業参入等支援センターの専門家派遣事業を利用し、司法書士と中小企業診断士の派遣を受けることとなりました。
司法書士からは法人化のメリット・デメリット、手続きの流れについて、レクチャーを受けました。
また、中小企業診断士からは、経営継承についての考え方に加え、マーケティングやブランディングに関するアドバイスも受けました。同園では、直売所をオープンした頃から、いちご園のロゴの作成やインターネットでの情報発信などに取り組んでいましたが、中小企業診断士の助言を受け、改めてブランディングやSNS活用の重要性を認識できたそうです。
これからの時代に向けて「ぶれない軸」を信条に挑み続ける
専門家からのアドバイスを受けたことで「自身が調べてきたことや考えてきたことを再確認、情報を整理できた」と感じたそうです。現在も他の農家の話を聞くなどして情報を集めながら、経営継承と法人化については検討中とのこと。
「経営全体のことを考えると、最終的にお客さんに商品を買ってもらうために、やはり品質の良いものを作ることが大前提で重要だということに行き着きます。この軸がぶれてしまってはいけない。この先、農家の数は農家の高齢化でどんどん減っていき、肥料や資材の価格高騰、自然災害への対策など農業にとって厳しい状況の中でも、まずは現在の経営規模を無理なく維持できるようにしたいと考えていますが、将来的には直売所の2号店をオープンするのもおもしろいですね」と、今後の展望を語る裕介さん。熱意をもって農業に取り組む「大場いちご園」は、これからも多くのファンへこだわりの商品を届け続けることが期待されます。
※還元型太陽熱土壌消毒
土壌の病害虫対策として、土壌を還元化し、太陽熱による土壌温度上昇を利用して土壌を消毒する方法。土壌に小麦のフスマ等の有機物をすき込み、大量の水を施用してビニールで被覆し、ハウスを密閉する。

イチゴを担当する大場裕介さん

複数の賞を獲得している
同園のイチゴ

4年前にオープンした直売所