茨城県農業参入等支援センター

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株式会社酒井農園

株式会社酒井農園

2020/12/9 掲載

株式会社酒井農園

地域:かすみがうら市
支援内容:法人化(2019年9月設立)
主品目:花木や果樹の苗木
経営面積:12ha

 

県内唯一のワイン用のぶどう苗木の生産から数百種類に及ぶ苗木の卸売まで幅広く展開

土質、気温、日照や土地条件など農業に適したかすみがうら市。この地で代々、苗木生産を営んでいる株式会社酒井農園代表取締役の酒井優一さんは、茨城県内で唯一のワイン用ぶどう苗木の生産者です。ほかにも、ホームセンターや園芸店向けのポット苗木、農家向けの裸苗木、国内外の苗木の卸売業を主に手掛けており、取引先からの要望にフレキシブルに対応しながら扱う品種は、桜だけでも約120品種、果樹や花木の苗木は300品種以上。どれも4代目の優一さんが、自身の勤めていた農業総合卸会社で培った苗木や植木の流通に関する知識、園芸農業で世界をリードするオランダ、カナダやアメリカでの見聞、国内での学び、そして酒井農園の両親から受け継いだ伝統を結集させた高品質な苗木です。社員らと共に、数十年先もしっかり育つ信頼される苗木を幅広く生産する県内有数の農家として知られています。

人材確保や育成の基盤を築くため法人設立へ

国産ワインや家庭園芸ブームで多種多様な品種の苗木の需要が拡大したことに伴い、農園の経営は順調に右肩上がり。しかし既に雇っていた日本人スタッフや外国人技能実習生だけでは人手が足りず、求人サイト等で募集したところ、人材確保の課題が浮かびあがってきました。
「農業の求人は当園以外にも数多くありますし、加えて農業科がある高校の先生から『(法人化されていない)個人経営の農園は生徒に推薦しづらい面がある』と本音を吐露された時は、確かにそうだよなぁと。13年前に実家に戻って苗木屋の第一線になったときから構想はしていましたが、やはり社会保険や福利厚生のある、長く勤めていける体制を整えなければいけないと決意しました」
安心の雇用体制を整えて人材の確保、育成の基盤を築くため、法人設立に本腰を入れた酒井さん。その際、「茨城県農業参入等支援センター」の専門家派遣を活用し、まずは中小企業診断士によるヒアリングを受けた後、農業分野の労務管理・労災保険に強い社会保険労務士や、中小企業・小規模事業者が抱える売上拡大等の経営課題に対応する相談窓口「茨城県よろず支援拠点」と連携して、ITコーディネーターのサポートを受けました。

専門家らが情報提供やアドバイスで手厚くサポート

法人化の過程では、通常の業務以外の書類作成など課題が山積し苦労した時期も。しかし、支援センターより派遣された専門家や県農業改良普及センターのスピーディーな情報提供やアドバイスによって問題を一つ一つ着実に解決。法人化への一番の懸念材料だった事務負担の増加も、派遣された専門家による支援の中で対応しました。
「専門性のある先生を派遣していただいたのは支援センターを活用した大きなメリット。自分たちが追加でやることはもちろん増えたのですが、本業に影響を与えない程度で済んでいます」
法人化してから早一年(取材時点)。会社設立後の各種事務手続きが一段落し、法人としての年間サイクルを経験した酒井さんは「税金や保険料がどのぐらいになるのか、法人化する前にしっかり計算して、資金をプールするなど対策を練ることも大事です」と、今後法人化を考える皆さんへ助言しています。
会社設立後は、日本人スタッフが新たに入社し、「既存のスタッフらも実務以外のいらぬ心配をせず、安心して勤められるようになったのではないかと思います」と笑顔で語っていました。
法人化によって経営基盤が安定した酒井農園。今後、更に人材確保を進め、国内外の苗木の技術やトレンドなどを柔軟に取り入れながら、丈夫で育てやすい高品質苗木の提供で農業の発展に貢献していきます。

株式会社酒井農園・酒井優一社長

代表取締役社長・酒井優一さん

生食用ぶどう、ワイン用ぶどうの苗木が育つほ場

一面に広がる生食用、ワイン用ぶどう苗木のほ場

高レベルの接ぎ木技術が良質な苗木を育てる

高レベルの接ぎ木技術が良質な苗木を育てる

国産ワイナリーの台頭など、ぶどう苗木需要は拡大中と酒井社長

国産ワイナリーの台頭など、ぶどう苗木需要は拡大中と語る酒井社長

酒井農園をサポートする県南農林事務所の川崎主任

酒井農園をサポートする県南農林事務所の川崎主任