茨城県農業参入等支援センター

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株式会社北茨城ファーム

北茨城ファーム

2020/10/1 掲載

株式会社北茨城ファーム

地  域:北茨城市
支援内容:異業種から参入(2019年4月設立)
主 品 目:ミニトマト
経営面積:504m²(1.7haまで拡大予定)

代表取締役 鷺隆一さん

震災を機にハワイアンズが農業参入。第2の経営の柱へ

北茨城市中郷町で高糖度ミニトマトの大規模農業施設を計画中の株式会社北茨城ファーム。福島県いわき市の大型レジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」を運営する常磐興産株式会社が、農業ビジネス参入のために設立した子会社です。
2011年の東日本大震災で大打撃を受けたハワイアンズは、レジャー施設による既存の経営に加え、第2の経営の柱となる新規事業を模索していました。他社と差別化できる新規事業について社内で協議を重ね、遊休社有地を活用した農業に活路を見いだしました。マーケティングによってターゲットにしたのは、今後の需要増加や収益性が見込める高糖度ミニトマト。複合環境制御を導入した大規模施設でのスマート農業に挑むことになったのです。
しかしサービス業が本業の常磐興産にとって、農業は全くの異業種。全てゼロからの立ち上げでした。数ある遊休社有地の一つが北茨城市にあったことから、手始めに本県農林水産部の代表メールへ問い合わせることに。するとすぐに、茨城県農業参入等支援センターとの面談の機会が設けられたと、北茨城ファームの鷺隆一社長は振り返ります。
「さすが農業県ですよね。最初の対面の場に担当者のみならず、上席である室長もいて、補助事業の担当者など一人ひとりが丁寧に説明、指導をしてくださいました。農業に対する力の入れようがすごいなと感心しました」
農業参入等支援センターのスピード感のある親身な対応、強い熱意が大きな決定打となり、北茨城市を拠点とした大規模農業への挑戦が始まったのです。

農業参入をワンストップで支援

設備投資に億単位の資金を要する大規模農業施設。建設費用の2分の1を支援してくれる国の補助事業「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」の活用は、事業者の強力なサポートになります。そのため常磐興産は、支援対象の条件を満たす子会社・北茨城ファームの設立に乗り出すことになりました。
法人設立後も、支援センターを通じて県の補助事業の担当部署や窓口である県北農林事務所を紹介され、その他にも農業に関するあらゆる相談事で活用。「農業のことは分からないことだらけ。そんな中、書類一つにしても、支援センターの担当者が解決してくれる人の所へダイレクトで話を繋いでくれた。その手厚いサポートがなければ、事業化まで漕ぎ着けなかったですよ」と鷺社長は笑顔で語ります。
構想から3年。事業多角化への一歩を踏み始めた北茨城ファームは、法人設立から4ヶ月で試験用のハウスを開設しました。民間の農業コンサルタントのサポートも受け、病気にかかりにくく、高糖度を実現するサンゴ砂礫の養液栽培を採用し、品種「サンチェリープレミアム」を1100株、「フラガール」を300株栽培中です。これまで年間平均糖度は11.3を記録。「計画以上の出来栄え」と手応えを掴んでいます。

異業種からのアグリビジネス参入の成功モデルへ

「日本の食料自給率は4割。コロナ禍のような状況では、国内での食料の確保は最重要課題です。それに昨今、異常気象が頻発し、このような気象に左右されない大規模農業は日本を救うであろうと考えています」と日本農業の一翼を担う覚悟を語った鷺社長。
今後は国の補助事業を活用して、経営面積を1.7haに拡大。県内有数の大規模スマート農業施設が完成した後は、年間収量300t以上を目標とし、「ハワイアンズトマト」(商標登録申請中)と称して首都圏へ出荷する予定です。
「施設内に8つのブロックが出来るので、最大8品種の栽培が可能となります。農業はIT事業などのように売上が高い訳ではなく、軌道に乗るまで数年はかかりますが、ニーズに応じて、様々な品種や別の作物にチャレンジすることも検討しています。ハワイアンズとのコラボ企画などもいつか出来ればと思っています」
多方面から注目を集めている北茨城ファーム。異業種からのアグリビジネス参入の成功モデルを目指し続けています。

フラガールが初収穫

フラガールが初収穫

北茨城ファーム

ハウス環境は基本的に遠隔で確認可能だが生育チェックも欠かさない

北茨城ファーム

社屋隣の試験用ハウス内では2品種の高糖度ミニトマトを栽培中

北茨城ファーム

北茨城ファームでは培地にサンゴ砂礫を使った養液栽培を採用

北茨城ファーム

すくすく成長中のミニトマト。定植から2ヶ月ほどで収穫予定となる