茨城県農業参入等支援センター

イラスト

有限会社ファームオアシス

有限会社ファームオアシス

 

有限会社ファームオアシス・篠崎毅代表

有限会社ファームオアシス・篠崎毅代表

2020/3/9掲載

有限会社ファームオアシス

筑西市 2006年4月設立
主品目:イチゴ、米、蕎麦、繁殖用黒毛和牛、ジャージー乳牛
経営面積:30ha

イチゴ

いちごの栽培品種は「とちおとめ」。甘酸のバランス良くスイーツ加工にも適している

ヨーロッパ型の循環型農業で県最優秀賞を受賞

広大な農地を活かして畜産、穀物、園芸作物を栽培するヨーロッパの循環型農業を目指し、“人々のオアシスになりたい”との願いがその名に込められた有限会社ファームオアシス。自社で栽培した減農薬の完熟イチゴ、濃厚な味わいのジャージー牛乳を使用した洋菓子店「パティスリーラシーヌ」が評判の農園です。「平成29年度茨城県畜産大賞」の最優秀賞を受賞。2020年にはイチゴが「筑西ブランド」に認定されています。
農園の原点は、篠崎毅代表が経験したヨーロッパでの農業実習。筑西市で葉タバコや米作りをする代々農家の家系で生まれ育った篠崎代表は20代の頃、西ドイツでキャベツやカリフラワーなどの露地野菜で生計を立てる農家に一年間ホームステイをしました。その時、スイス・ベルン地方で実習中の知人農家を訪ね、そこで目の当たりにしたのは、家族経営で有畜農業を実践する姿。「スイスは永世中立国で食料自給は国策。国民もその意識が非常に高いし、こんな農業をやっていきたいと強く思った訳です」と自身の方向性を定めました。そして父親から農業経営の手綱を引き継ぎ、法人化を機にイチゴ栽培をスタート。集客力があり、冬場の収入を安定させ、キャッシュの流れも良くするという理由で選択しました。中でも酸味と甘味が絶妙な「とちおとめ」は、顧客である筑西市近郊の住民が最も親しむ味。以前は数種類の品種に着手していましたが、現在は一種類に絞り、ハウス8棟で栽培を続けています。

初の店舗作りや総合化事業計画の認定に悪戦苦闘

「食品の原料生産だけでなく、その先まで手掛けてみたい」、「農業の良さを色んな形で展開したい」。かねてより6次産業化への憧れを抱いていた篠崎代表。菓子職人の専門学校を卒業した次女を3年間、県内の有名店で武者修業させ、既に人気となっていたイチゴを目玉とした洋菓子店を開く壮大な計画に乗り出しました。
もちろんそれまで農家一筋で、店舗作りや経営は全くの素人。他県で話題の6次産業化レストランなどを参考にしつつ、業者、調理器具の選択も手探り状態の中、計画を進めていきました。
「申請そのものに一年、予算が通るまで一年。6次産業化プランナーの支えは有り難かったですが、簡単にはいきませんでしたね」と当時を振り返る篠崎代表。 通常の農作業に加え、書類の作成や面談などプラスアルファの作業が積み重なる日々。プランナーの力も借りながらそんな困難を乗り越え、「平成24年度農山漁村6次産業化対策事業助成」を受けられることになりました。そして2014年、念願の洋菓子店が完成したのです。

鍵となるのは販売力。勝負ポイントを作れば6次産業化の成功率が上がる

イチゴの栽培を始めて8年の間に獲得したリピーター客がそのまま洋菓子店の顧客となり、次第に「ジャージー牛乳プリン」「いちごのショートケーキ」「米粉ロール」など農園こだわりの素材を活かしたヒット商品が誕生。旬の素材を一番美味しい時期に収穫し、贅沢にたっぷり、お手頃価格で提供できるのは農園直営店の強みです。気になる売上は「オープン当初から横這。しかし休日を増えているのに売上はキープしている。経営の効率化を図れているのだと思います」と軌道に乗っている様子です。
今後は会社存続のための事業継承が大きなテーマ。イチゴのハウス増設、粗飼料(イネWCS)の増産、さらなるスイーツ部門経営の効率化を進めようとしています。 「農業は厳しいが工夫次第でビジネスチャンスが転がっている。人手不足を解消して事業の発展に努めたいです」と攻めの農業にまい進しています。 これから6次産業化に挑む方へ、篠崎代表は以下のようにアドバイスしています。
「我々の場合、それ自体に集客力がある作物や商品を選んだこと、またイチゴの生産時期がクリスマス、正月、卒業式や入学式、桃や端午の節句などイベントと重なり、ケーキの消費量が多い時期。そういった付属の要因も大きかった。まず大本の経営の基盤となる生産部門を安定させること。一発逆転を狙うために6次産業化に挑むのは、非常にリスクが高いと思います。販売力は6次産業化の一番の課題です。営業、商品力やクオリティーの向上など色々切り口がある中、勝負ポイントを作ることが出来たならば、成功する可能性は高くなると思います」。

2014年に完成したパティスリーラシーヌは次女が中心になって切り盛りする

2014年に完成したパティスリーラシーヌは次女が中心になって切り盛りする

いちごを栽培するハウスは、パティスリーラシーヌのすぐ目の前に位置する

いちごを栽培するハウスは、パティスリーラシーヌのすぐ目の前に位置する

好評を得ているショートケーキとジャージー牛乳プリン。プリンは近隣道の駅でも販売

好評を得ているショートケーキとジャージー牛乳プリン。プリンは近隣道の駅でも販売

焼き菓子なども販売。「牛さんのお菓子屋さん」と子どもたちからも評判だとか

焼き菓子なども販売。「牛さんのお菓子屋さん」と子どもたちからも評判だとか

店舗内の一角にはいちごの直売コーナーも備える。新鮮いちごの人気も高い

店舗内の一角にはいちごの直売コーナーも備える。新鮮いちごの人気も高い

ファームオアシスは生態系と共存し土をつくる「循環型農業」に取り組んでいる

ファームオアシスは生態系と共存し土をつくる「循環型農業」に取り組んでいる

店横にはジャージー牛を放し飼いに。ジャージー牛もいちごが好物なのだとか。

店横にはジャージー牛を放し飼いに。ジャージー牛もいちごが好物なのだとか。