茨城県農業参入等支援センター

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株式会社 鹿吉

 

代表取締役 吉田喜一さん

代表取締役 吉田喜一さん

2020/2/1掲載

株式会社 鹿吉

鉾田市 2012年1月設立
主品目:さつまいも
経営面積:42ha

 

全国レベルの知名度を誇る芋加工品

鉾田市で、初代はデンプン芋や干し芋用のさつまいも、二代目から食用さつまいもを手掛け、三代目へと引き継がれている芋農家・株式会社鹿吉。絹のようになめらかな食感の品種「シルクスイート」を主に栽培し、さつまいもの糖化を促進するキュアリング貯蔵を導入。現在の売上の4割を誇る「伝統壺焼き芋」や干し芋、大学芋、芋けんぴ、洋菓子のラングドシャ、串切りやスティックなど各種カット処理など、年間約4,000トンのさつまいもを適材適所で最大限に活かす加工開発に取り組んでいます。
生産から加工、販売の一連の工程一つひとつにこだわりを反映。ミネラル成分が豊富な沖縄県与那国島産の化石サンゴを使用する土作り、貯蔵庫ではクラシック音楽を流し、それらを反響させる宇宙ロケットでも採用された壁材を使用。農園を蔵元、栽培者を芋師と名乗り、小江戸情緒溢れる埼玉県川越市の街並みを参考にした本社を設立。有名料理人と組んで、洗練されたデザインやレシピによるブランディング戦略など、細部のディテールにまで心血が注がれています。
そんな鹿吉の商品は「茨城県土作りコンクール最優秀賞受賞」「いばらきデザインセレクション2013選定」「第一回地場もん国民大賞審査員賞受賞」など多数の受賞歴があり、自社通販だけでなく、大手百貨店、人気スーパーなどでも販売。全国メディアにも度々登場し、スポーツ選手や芸能人らのお取り寄せ商品としても知られています。

大波乱の6次産業化の幕開け

鹿吉の6次産業化への挑戦は、三代目・吉田喜一社長が20代前半で訪れたアメリカ・カナダへの農業研修まで遡ります。
「親戚や家族、近所仲間で会社を設立、サングラスに大音量をながして大きなトラクターを運転し、農薬はセスナで散布。そして夜はバーや仲間同士のBBQで飲み明かす。天候に恵まれ、豊作で味も抜群だった年の商品がプレミア価格で取引されていた。日本の農業とはまるで真逆」とその差に衝撃を受けます。
そして吉田社長は、「伝統壺焼き芋」の商品化、リーマンショックや福島第一原発事故による風評被害など、様々なタイミングが重なる中、2012年1月に法人化し、6次産業化を踏み切ることに。
しかし「当時は約33haも作っていましたが、規模拡大のために整備しようとした貯蔵庫の完成が遅れ、積雪によって3分の2が廃棄処分。少なくとも1億円の収益を見込んでいたのですが、わずか約4千万円のみでした」と、まさにどん底の状況。
大波乱の6次産業化の幕開けとなった鹿吉。不幸中の幸いだったのは、全国メディアで高く評価され、追い風が吹いていたこと。農作業と平行して、吉田社長自ら営業マンとして、展示会、業者との商談などに出向き、徐々に販路や客層も拡大。問題を地道に解決していった結果、現在は順調に売上を伸ばしています。

農商工の連携でより付加価値を。多方面からアイデアや知識を得る

吉田社長は「安易に6次産業化を目指すのではなく現状の問題をいかに早く解決に導き、人々が喜んでくれる価値ある商品とサービスを行うかが重要。県内の農商工で技術を持ち寄り、連携してより価値の高いものを作るのも一つの手。もしアイデアや知識がなければ、どんどん展示会や多業種が集まる場に足を運べば、多方面からそれらを得ることが可能だと思います」とアドバイス。
法人化の船出は家族4人でしたが、今では品質管理部、商品開発部、東京営業部など分業化して組織強化を図り、現在は社員とパートで計74名。2025年日本国際博覧会や統合型リゾート施設事業の推進、日本の人口減少時代の到来に伴い、インバウンドを意識した新商品の開発や海外への展開も構想中です。
目指すのは、美味しいだけでなく、生活に必要な健康食品のような社会的価値のある商品を人々に届けること。鹿吉の挑戦はまだまだ続いていきます。

黄金色のシルクスイート。文字通り絹のようになめらかな舌触りを味わえる

黄金色のシルクスイート。文字通り絹のようになめらかな舌触りを味わえる

敷地内の蔵には、焼き芋加工に使用する壺がずらりと並ぶ

敷地内の蔵には、焼き芋加工に使用する壺がずらりと並ぶ

さつまいもを貯蔵するキュアリング庫は、外観までこだわりを反映している

さつまいもを貯蔵するキュアリング庫は、外観までこだわりを反映している

本社直売施設のシンボル的な存在になる梵鐘は桜川市小田部鋳造製

本社直売施設のシンボル的な存在になる梵鐘は桜川市小田部鋳造製

パッケージデザインも秀逸。ブランディングで上等な手土産としても人気を博す

パッケージデザインも秀逸。ブランディングで上等な手土産としても人気を博す

英語表記の商品フライヤーも準備。幅広い目線とアイデアで展開

英語表記の商品フライヤーも準備。幅広い目線とアイデアで展開